ウレタンで行われた表面被覆工について

大昌エンジニアリング
太田 忠良
2009年8月7日


1、過去施工されたウレタン系表面塗膜工は、故障が発生しています。

阪神高速道路でもウレタン被覆を行った壁高欄にクラックが発生するなど、劣化現象を無数に発生しています。

hh  安長橋 大正橋 053
米子駅地下駐車場出口           安長橋
ブリスタリング及び紫外線劣化

  ①劣化原因の第一は、コンクリート中の水分を完全に封じ込めてしまうために、温度変化によってコンクリート中の水分が逃げ場を失いブリスター現象を引き起こしていること。
あるいは、冬季に塗膜とコンクリート界面に滞水した水分が凍結・融解を繰り返すなどが考えられます。

 ②仕上げ材の主材は、炭素の連鎖でできており、日本塗料工業会のデーターによると、年間、ポリウレタンで2μ、エポキシ系で10μの摩耗が起こるとされています。このために、白亜化、はがれが生じます。したがって、塗装規格では膜厚30μを確保する必要があり、この厚みで、15年程度維持できるように想定されています。

 ③阪神高速の料金所周辺では渋滞の影響で排気ガス等の影響を受けるせいか、塗膜が柔軟性を失い、コンクリートのひび割れとともに割れてしまうのではないか、と想像しています。(分析を担当していないので目視の範囲です)
現実には6年で白亜化、錆の発生が生じています。また、初期の付着力はあっても、コンクリート中の水蒸気が液体化するので、はがれが生じます。

2、今回施工(破壊試験)で明らかになったのは

橋脚に塗装してあったウレタン系被膜はコンクリートに殆ど付着していず、被膜とコンクリート表面の間に滞水層を作る悪い役割しか果たしていなかったことです。そして、ケレンして塗装被膜を取り除いたところクラックが発生していました。ウレタンはひび割れ追従性があるとされていますが、部分的には剝れが生じていましたが、その他の被膜はフィルムとして橋脚を覆っているので、外見からは中のひび割れを予測できない状態を作っていました。
いつからそうなったかは不明ですが、現実はコンクリートの劣化の促進要素をわざわざ提供していたのでした。
伸縮装置の隙間から滲入した雨水及び塩化カリウムを大量に含んだ水分が、桁を伝い、支承台を侵食して、橋脚上部のクラックから躯体を長年湿潤化してきました。
もちろん、当初建設時に施工ミスあるいは設計ミスで誤って設置した支承アンカー用の孔の補修をきちんと行っていず、前回の補修を担当したときに、構造上の弱点に気付かなかったことが最大の問題であろうと思いますが。孔埋めは緻密性を欠いたコンクリートで行われており、結果として、孔上部に生じたクラックから滲入した水の滞水部になっていました。そして、この孔から躯体表面に浸み出した水が、表面に達していました。
米子市の鳥取県の管理道においても同様の問題が発生していました。(野本橋)この場合は、クラックに追従出来ていませんが、被膜を取り去るとどのようなクラックがあるか不明です。

3、材料の品質規格について

道路公団の「無機系被覆システム」は昭和63年5月に制定されており、その対象はポリマーセメントです。
この時代は、1980年代にアルカリ骨材反応が報告され、JIS規格にアル骨試験が登場したのと同時期であり、アルカリ骨材反応の抑制を主目的としたので「水蒸気の透過性」に問題意識があり、「コンクリートの中の水分を放出させる」という問題意識は、なかったのです。
『透水抑制率』という概念がなかったといえます。
(尚、シラン系は『撥水材』としてのみ扱われています)
また、「酸素透過抑制」などが重視されています。これは鉄筋腐食抑制への配慮であり、二酸化炭素抑制と二重に規定されています。鉄筋防食の基本はコンクリートの二酸化炭素による中性化阻止と思いますので、「あれもこれも塞ぐ」という考え方は「いかがなものかな」と思います。
当時は、ナノ膜という概念すらないので、コンクリート表面を『緻密に外気と遮断する」という規定になっているのではないでしょうか。また、当時「無機系塗装」はポリマーセメント以外に存在していないので、(システムの例参照)なぜかアクリルポリマー(有機系)が混入してある塗料を「無機系」に分類してあります。  一般に補修時期に来ているコンクリート構造物は、乾燥収縮、水和反応はほぼ終息しています。つまり追従性はコンクリートの熱膨張が対象になると考えます。また、アルカリ骨材反応も0.5%を超えるものはごくまれであると思われます。

 表面被覆を適切に行えば、アル骨は終息するのですから、4%程度の伸び率があれば十分といえるのではないでしょうか。
一方で、JHの「コンクリート塗装剤の品質規格」は、平成18年10月に制定され、対象を4項目に分類しそれぞれの項目別にしてあります。
この理由は、例えば、中塗り材はコンクリートに付着するのではないので、試験項目から個別におこなうことを止め、塗膜の全体が付着強度として評価されることになっています。
土木学会は、平成16年1月から4ヵ月かけて、表面被覆材の評価基準、試験項目・方法を定めるために試験を行っています。この時も試験をした材料はポリマーセメント系に限られている。そのために、「透湿度」と「透水量」に相関関係が出現し、酸素透過性試験は、方法に問題があるとされ、結論として『評価基準は定めるが「絶対的基準を示すものではなく、今後の種々の共通試験結果や公的試験機関での測定結果を踏まえて、さらなる検討を加える』としている。が、今日まで次のレポートは出ていません。
このように、無機系表面被覆材の基準は基本的にポリマーセメント材を対象としており、「無機」とはいうものの有機系添加物を含む材料である。
表面被覆を「無機系」と『塗装』に分けて考えてきたが、無機系の被覆工をどのようにするかは、いまだ検討中ということではないでしょうか。


4、パーミエイトの特徴

①パーミエイトはアルコキシシランを原材料の一部にしていますが、シラン系化合物が特徴とする立体障害(モノマーでしか存在出来ない)を克服し水と結合しポリマーを徐々に形成します。(7日間程度)

②そのために、含浸させることも可能であるし、色素を入れれば塗料としても使用できます。HS-350とHS350の違いは、実は粘度の差でしかありません。経済性だけを考えれば、HS350を使用し、含浸させ、深いところで膜を作らせたほうが㎡あたり100g程度の塗布でよいので安価です。しかし管理手法が開発されていないので、量管理になります。
「含浸量をどのように測定するのか」あるいは性能確認を現場でどのように行うのか、の方法はすぐには見つからないと思います。
尚、現在はJRと共同で、コアサンプル試験は実施しましたが、簡便な測定方法は今のところありません。
個人的には、四国総研の横田優氏の研究に注目しています。

③理解していただきたいのは、「ナノテクノロジー」の世界ではすでに空気中から窒素を分離するのに、このような膜が事業化されている、ということです。

 ④パーミエイトの高分子ポリマーはある意味で世界的発明です。シロキサン結合のポリマー化という特徴が、紫外線劣化、二酸化炭素の不透性、剝れない付着力などの性格をもたらしています。

   ※高分子ポリマー入りセメントは、セメント材料にエマルジョン(樹脂)としてポリアクリル酸エステル等を混和し、セメント中にポリマーフィルムを形成するものです。
    この混和剤によって、水密性・気密性、凍害防止、ひび割れ追従性、などを確保
します。付着は、旧コンクリート面への密着=一体化という構造です。
  ※※有機系塗装剤は、樹脂に揮発性油脂を入れて液体状にしたものです。したがって、硬化時に有機ガスを発生します。
基本結合は高級アルコールでCH3- CH3 の連鎖です。紫外線はこの結合を破壊します。
そのために劣化が起こり、白い粉体になり、表面に出ます。この現象をチョ―キングといいます。(白亜化)
コンクリート界面とはプライマー接着剤等で密着させます。
   ※※※今までは、上記の2種類しか存在していないので、それに対応した試験項目が設定されています。
パーミエイトは、モノマーである原材料がコンクリート細孔に滲入し、水蒸気と反応し、徐々にポリマー結合をします。初めから樹脂ポリマーではないことが特徴で、コンクリート細孔に容易に滲入し、無数の根をコンクリート中に生えさせた接着・付着をします。接着表面積が上記の2種と比較して桁が違う量になります。
そして、結合主鎖はシロキサン結合なので、紫外線劣化を起こしません。

 ⑤パーミエイトは当初、亜鉛溶射工法の封孔材として開発されました。その後、公的な
大学等での実験、民間での実証を経て、コンクリート保護にも大変良い素材であるこ
とが分かりました。
 もちろん鉄の塗装剤としても群を抜く素材です。ただし、「40年持ちます」というのは今のところ理論値でしかなく、価格面では『トータルコスト』ということでしか勝てません。ガスタンクや高所の危険場所以外では普及は難しいのではないでしょうか。実は、東京農業大学の桧垣名誉教授(日本白アリ学会長)と共同研究が終わり、ホウ素と組み合わせて防腐、対白アリ材(きわめて安全な)としても、使用が可能になりました。

 ⑥確かに、実験データーとしては、不十分な部分がありますが、今月から日塗倹及び三重県技術センター、鈴鹿高専と共同研究を開始し、全データーを揃えます。

 ⑦新技術が採用されるには、さまざまな手続きが必要です。
  とはいえ、促進試験700時間はもとより、実証実験データーがすぐにそろうわけでもありません。

 ⑧新素材の特徴を評価していただき、規格を設定していただきたいと考えます。

5、維持管理など

①施工の容易さ
パーミエイトは刷毛・ローラー塗りで施工を行い、下塗りから上塗りのインターバルは2時間以上ときわめて短時間なので、取り立てて技術・管理を必要としません。
このために、工程が短縮されます。

②維持について
コンクリート表面保護に使用し、何年か後にひび割れが発生したとしても、その他の部分には『根を張る』強力な付着をしているので、その部分に必要量(ごく少量)の塗布をすれば、良く、ウレタンのように旧塗膜を取り去る必要はありません。
紫外線による劣化において、長寿命であると同時に、塗り替えの費用が大きく削減できます。
※パーミエイトの表面硬度は11N/m㎡以上あります。すり減りは基本的にありません。
※また、火炎に対しても燃焼しないので、補修平面は少なくて済みます。

鋼材に対する利点

※1:工程の短縮
重防食塗装の塗り替えは、日本道路協会の「鋼道路橋塗装・防食便覧」によればRC-Ⅰを原則として、それが出来ない場合RC-Ⅲを行うとされていますが、現実にはⅠ種ケレンには様々な制約が伴い、3種ケレンが多く採用されています。
パーミエイトは、1種ケレンを当然理想としますが(旧塗膜がはがれる場合があるので)基本的に3種ケレンにセラアルミ(パーミエイトに鱗片上のアルミを混入させたもの)でタッチアップし、調色品を塗装します。
有機系塗装は、ケレン後、6工程を必要としますが、パーミエイトは2工程でインターバルが短いので、工程短縮には大きく貢献できます。
※2:安全性
鋼橋塗装は安全衛生法における『有機溶剤室内作業』に当たり、厳しい安全管理を必要としますが、パーミエイトは水と反応するときに33g/㎡・24時間のメタノールを発生しますが、作業環境を整備する費用が、有機溶剤に比較して少額で済みます。有機溶剤は『発がん物質』に指定されているので、石綿災害の防止とともに、重要な保護工を必要としています。
※3:長期の保障
紫外線劣化を基本的に起こさないこと、素地(鉄)と密着するので、塗り替えのインターバルは2倍以上であり、また、塗り替え時には景観維持を目的とするので、ケレン工を必要とせず上塗りだけで十分です。
仮設工費を含めれば、20年後には十分なライフサイクルコストの削減結果となります。

う

2002年に施工された水管橋塗装

じ   

2009年(施工後7年)でチョ―キングが発生し、被膜が破壊されている。