鉄筋の腐食抑制について1.基本的なこと ①鉄筋の腐食は(rFe2O3・nH2O)による不動態皮膜に覆われている。厚さは0.1nm(ナノメートル)程度であるので、目視することは不可能である。 コンクリートの中性化が進行すると、この不動態被膜が破壊され、水と酸素が存在する条件下で腐食電流が発生し、劣化が進行する。 特に塩化物イオンが鉄筋を取り巻くコンクリートに存在すると腐食を加速させる。 水と酸素が供給されると腐食が進行する。 ②したがって、塩化物イオン、H2O、O2の滲入を抑えることによって、『赤錆』の発生を抑えることが期待されるのである。 「(これまでの)シラン系表面含浸材を使用すると中性化が進行しやすいが、吸水は抑制されるので、腐食電流を抑える相応の効果が得られる」 ③コンクリートの中性化と塩害によって不動態皮膜が破壊されて錆が発生し、鉄筋が膨張すると、コンクリート表面にクラックが生じ、激しいものは爆裂を引き起こす。 しかしすべてのクラックがこのために起こるわけではない。 ④クラックが、鉄筋の腐食によるものであるかどうかを非破壊で検査する方法が確立されているわけではないが、『交流インピダンス法』『2重対極式交流インピダンス法』で状況の概括は診断できる。 ⑤そこで、コンクリート構造物の全断面を上記の測定器具を使用して診断するのか、あるいは今回のような方法で測定するのかは、費用対効果・予算の許す範囲ということになる。 今回の調査は目視、一定の破壊試験によるものであり、中性化の進行が一定に進んでいるが、それだけがクラックの原因ではないことも明らかである。 コンクリート(床版)が施工直後からクラックなしで推移し、「中性化の進展とともにクラックが生じた」と結論付けるのは無理がある。 そうではなく、当初は小さな(あるいは相当大きな)ひび割れであったものが、走行荷重によるたわみ、凍害、隙間からの塩分・二酸化炭素などの侵入を繰り返して、今日に至ったというべきであるだろう。 ジャンカ等も多数あり、「鶏と卵」の関係が推測される。 ⑥したがって、保護工の基本はコンクリートへの充填及び注入工法で鉄筋の腐食を取り去り、直接塗布により空気(酸素)及び水分から遮断することである。 完全な「鉄筋防食」は設計段階から求められていないのである。 ⑦補修した電気抵抗の大きい部分と、電気抵抗の小さい既存コンクリートの間で発生する巨視的なマクロセル腐食を抑制するには塩分と吸水を抑止すれは、有効と判断される。(北海道開発土木研究所月報№632) ⑧表面被覆工法と表面含浸工法の違い ⅰ、工期の短縮 ⅱ、施工費が安い ⅲ、施工後も構造物の表面を目視できる(劣化の度合いを経過観察できる) (北海道開発土木研究所月報№632) 現在、表面含浸工に期待されているのは、もともと未来永劫の強度ではなく、中 性化の抑制、鉄筋腐食の抑制であり、一定の再施工を含む(桁の塗装工のような) ものであるにすぎない。 2.実践的な施工方針 『プロテクトシルを塗布したのちパーミエイトを塗布すればよいのではないか』につ
いて 他の、アルコキシシランとの違いは、連鎖にアミノ基を利用し分子同士の連鎖 を生じないようにしているため、微細孔に深く浸透することが出来る。 ※シランが鉄筋に到達して腐食を抑えるのではない。 (※亜硝酸リチウムは水溶液なので、水分子より小さい孔には浸透できない。) (これまでのシラン系は水系(水で希釈するもの)溶剤系も加水・縮合による連 鎖が早く浸透する前に細孔をふさいでしまう欠点をもっていた。) ※従来のシラン系含浸材は長鎖の炭素基(疎水基)を保有しているので、立体障害を起こしやすく縮合反応による分子間結合は持てずモノマーからオリゴマーで存在する。プロテクトシルもこの分類に入る。 そのために、一部はコンクリート中深く到達できる。 このことは、紫外線劣化に弱い(2年で表面の撥水性が消滅するといわれている) これまでのシラン系含水材の撥水機能が消滅することを、浸透深さと、量でカバ -するということである。 欠点 ⅰ、アミノ基を使用しているために安定的な構造にならない。ⅱ、土木学会の含浸性試験は7.4mmとしているがこれは集団で存在しているプロテクトシルの層が撥水機能をはたしているのであり、一部は奥深く浸透する。 が逆に薄くなるところもできる。 ⅲ、二酸化炭素は大通りになる。『中性化は進行する』(前掲論文) ⅳ、施工時にはコンクリートの含水量が少なければならない(メーカーは8%以下としている) [パーミエイトの単独施工で十分である] ①「再施工を前提としている」とはいえ、再施工しないことが一番である。 ②表面含浸工の目的は、外部より水分を透過させず、コンクリート中の水蒸気を排出させることである。パーミエイトは更にCO2を透過させない機能を有している。 合わせて、紫外線劣化を生じさせないので、撥水機能が低下することはない。 ③このことが可能なのは、ナノテクノロジーの利用によって、形成される高分子ポリマーの性質が上記条件を満たしているからである。 ④実際に塩化物イオンが浸透している構造物に対する検討。 ⅰ、土木学会では鉄筋の腐食発生限界を塩化物イオン換算1.2㎏/m3としている。 ⅱ、塩化物イオンがコンクリートに入る可能性は ア)もともとの骨材に塩分が含まれているもの イ)海岸等の飛沫。寒冷地における凍結防止剤(塩化カリウム)の散布 ウ)これらが、コンクリート表面のクラックを通して滲入する 等である。 ⅲ、すでに鉄筋周辺の塩化物イオンが発生限界を超えているものは、断面修復等 を行うべきである。しかしまだそれ以下である場合は、外部からの侵入を許 さないことが大事であり、土木学会の表面含浸材試験方法で、塩化物イオン をほぼ100%阻止しているパーミエイトは有効である。 (別紙比較表) 蛇足) ①シラン系化合物の汎用形態の一つは、洗車時の「高性能撥水ポリマー洗車」である。この性能(よくも悪くも)については、利用者がよく知っている。 ②もちろん検討した2種とは全く違う。 |