土木工事における衛生管理 |
鳥取支部幹事 太田 忠良 |
当支部においては、年2回支部総会を兼ねて会員による研修会を実施してきた。平成16年に石綿関連法規勉強会が法の17年施行を
前に取り組まれ、毎年衛生関係の課題をテーマの一つとしてきた結果、建設現場における安全対策とともに、安全コンサルタントにも
有機溶剤中毒予防等、衛生管理の問題意識が生まれてきた。 会員のうち安全コンサルタントは建設工事出身者が多く、労働災害防止活動を中心に活動してきた。全産業の20%を占める死傷者、 34%を占める死亡者という現実の中で、安全に関する知識が経験上求められてきたからである。 このことは、発注者側においても顕著であり、国土交通省は『建設産業における総合的な安全確保に関する方針』や 『事故防止のための重点指針』等を毎年発表し、事故のデーターベース化も進み、受注側の工事現場責任者もマネジメントシステムを 導入しながら、安全管理を実施している。 しかし、近年道路構造物が老朽化し「橋梁長寿命化」計画が策定され、その補修工事を監修すると、補修資材に大量の有機溶剤や 急性毒物指定品が何の考慮も検討もされることなく設計に組み込まれていることが判明した。 建設工事の設計はいわゆる「建設コンサルタント」が発注者の委託を受けて設計しているのだが、土木工事の学問的基礎は 物性学であり、さまざまな補修材料が、人体にどのような悪影響をもたらせているのか、という問題意識も知識もないのが現実である。 これは、発注側の監督・技術者も同じである。 橋梁の補修工事は、河川保護上吊足場をシートで覆い、ほとんど密閉した作業環境にある。いわゆる三方(四方)を囲われた場所 (室内作業)で錆落としや、塗装工事が行われているのであり、都市部の橋梁では、サンドブラスト(サビ落とし)の為に 完全密閉した空間で、粉じん作業・塗装作業が行われている。 また、コンクリート保護材の中には急性毒物なども労働者に知らされることなく平気で設計されている。 足場工は、発注側設計書に「積み上げ仮設費」で通常計上してあるが、衛生対策は全く計上していないし、また野放図に作業者は その環境下で作業しているのである。安い規格外マスクを着用しているものは良い方で、タオルで覆面している程度で作業がされ、 局所排気装置はまず設置されていず、コンクリートのハツリ作業や、ケレン作業時に電動ファン付き防塵マスクをしているものは まれである。 私は、依頼を受けた範囲で「設計書の安全診断」を行い、発注側への申し入れを始めたばかりであるが、こうした活動を通して、 ぜひ中国地方の仲間の皆さんにも、衛生法の定める対策を建設工事において進めるように活動していただきたいと思います。 |
2009年(平成21年)10月31月 ㈱大昌エンジニアリング 代表取締役 太田忠良 |