1、コンクリート保護工法の目的 |
土木工事におけるアセットマネジメント手法が採用され、土木構造物の長命化工事が国土交通省の主導で
全国的に行われている。この中で、劣化したコンクリート構造物の補修工法が多数開発され、さまざまな
工法が試工されている。あまりにも多様化されたために、本質の議論がどこかに忘れ去られ「性能」規定が
設計書に織り込まれ、メーカー各社が「スペックイン」を目指して競争しているのが現実である。 コンクリート保護工の本質は、
「剥落防止」工を行う必要は本来必要がないと考えられる。 |
2、有機系塗装による保護工法 |
有機系塗装工法は無機系ポリマーセメント塗布工法と並んで、保護工法として最も古い歴史を持ってきた。 この考え方は、コンクリートに外気から供給される劣化因子(水、塩化物イオン、二酸化炭素、ガス等)を遮断し、 美観の向上も実現するというものである。 欠点は
|
*RC床版に行われていた有機系保護工。施工後10年。一部滞水。アクリル系と思われ、 回転系ブラシ等に廃材が絡み付き「ケレン」は極めて困難。2次補修時には阻害物になっている。 |
|
3、有機系塗装による『剥落防止』工法 |
|
4、ポリマーセメントモルタルによる保護 |
|
5、含浸剤による施工方法 |
元々、有機系、無機系ポリマーセメントの結果が思わしくないので、開発されてきた。 ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム、亜硝酸リチウム等のコンクリート改質を目的とするものと、 シラン系のように撥水を目的とするものに大別できる。 この中で、鉄筋の防錆性が高いのは亜硝酸である。亜硝酸酸リチウムは、混合物であり、 リチウムイオンがコンクリートを改質し亜硝酸が不動態被膜を回復することを目的としている。 高価なのと環境破壊性が一定にあるので、橋台やカルバート等構造物背面から水分が供給され続ける悪条件下でなければ、 使用は控えるべきではないか。 ケイ酸ナトリウムはアルカリ付与を目的として採用されてきたが、アルカリ骨材反応のある構造物への使用は 控えるべきと考える。 含浸系のものは、既設コンクリートの状態に大きく作用され「含浸量」「含浸深さ」等は、目安に過ぎない。又、 効果も一定ではありえない。その意味で、「使用量管理」で行われている出来形管理では不十分と言わざるを得ない。 極端な例はA社の製品であり「600g/㎡を上塗り4回」としているが実際は蒸発浮遊落下等のロス、浸透したかどうかの確認は 全く行われていず、空缶検査のみであるので、施工業者には妙に人気があるものもある。 シラン系含浸材の特徴は、撥水性とモノマーもしくはオリゴマーで分子が小さいという点にある。 「表面含浸材によるコンクリートの透水抑制効果に関する研究」(平成19年清水建設田中博一ら)においても 中性化抑止効果はほとんどないとされている。 シラン系は分子が小さいためにコンクリート微細孔中に浸透しやすいが、コンクリートに定着しない。 微細孔はほとんど閉塞されないので、水蒸気も二酸化炭素も透過し、透水抑制効果は水が表面張力によって肥大化するので コンクリート中に浸透できず実現される。 シランの効果を持続させるためにメーカーはそれぞれ技術競争を行っている。たとえばアミノ基を添加して立体障害を 起こさせ、浸透しやすくしたもの[公表しているのはプロテクトシル]粘性を与えた混合物で定着性を高めたもの [マジカルリペラ―]よくわからないが「アルカリ環境では樹脂化する[ニュースパンガード] ※既設コンクリート表面は中性化しているのであまり意味はない。 ※※、プロレクトシルは「鉄筋防錆性」を標榜しているが、既に破壊された不動態被膜を回復する機能があるわけではなく、 又コンクリートの中性化を再アルカリ化させるわけでもない。撥水機能が量的に持続するにすぎない。 実際土木学会の「中性化抑制率試験」では、まったく低レベルである。(一覧表参照)H2OもCO2もバンバン透過するものである。 結局モノマーで浸透し、空気中の水と反応して樹脂化することに成功したものはパーミエイトのみである。 |
6、パーミエイトの特徴と弱点 |
パーミエイトは、シランの分子結合が高分子化合物になり、分子の隙間の大きさがH2O<パーミエイト<CO2であるので、ナノレベルで、
二酸化炭素不透過、水蒸気透過性能を保持し、紫外線劣化を起こすC-C-C結合を主鎖に持たないので、耐候性に優れ、品質として格段の
安定性を持つのである。 モノマーで微細孔に浸透して樹脂化するので、細孔を塞ぎ、表面被膜は細孔中に「根を張った」状態になるので付着性能は極めて高い。 又、浸透している状態を確認後、上塗りを行うので必要量が明確に分かる。 弱点は、基本的に硝子であり、硬度は高いが、引張には弱い。(ひび割れ追従性は低い)しかし、既設コンクリートは当然初期の温度ひび割れ、 表面乾燥ひび割れは終息しており、振動による劣化が主原因である。逆に、クリアーを塗布すれば構造上の床版等の劣化は発見しやすい。 |
7、結語 |
①コンクリート保護工は、
しかし、コンクリートはもともとひび割れを無数に内包する構造物であり上記の作業だけでは、十分とは言えない。 そこで、表面保護工を行う必要が生じる。 ②床版等の薄い鉄筋被りの少ない構造物においては、亜硝酸リチウムを200g/㎡程度塗布し、パーミエイトで封孔するのが最も適切な対処方法と考える。 |
2011年11月 ㈱大昌エンジニアリング 代表取締役 太田忠良 |